人が人で在るために

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「一分……妙ですねえ」 楠木の報告を聞いて、ルゴールドは戦況を読み解いた。 「私達はその姿に対するハッキリとした攻略法は準備していません」 そもそも、エレメントを受け付けなくなった龍希の正確な能力を知らないのであればそれは当然である。 「その状態から一分と言うスピードで貴方を追い詰めることができたとはとても考えられない」 「なら楠木さんの言ったことが間違ってるんだろ」 「いえ、それは有り得ません」 即答したルゴールドは勿論のこと、周囲の誰も狼狽えるような素振りを見せなかった。表面上の態度だけではなく、脳内に流れる電流を透視して感情の変化を直接観察できる龍希の目で見てもそうだと言うことは、楠木の情報を微塵も疑っていないと言うこと。 黒いシミの付いた木の板に、一分間に二回ほど指を押し付けるだけの行為をである。 「逆に、貴方は既に我々が手を下すまでもなく追い詰められていたと言うことです。自分が絶対だと信じた魔法を破られたのが余程ショックだったようですね」 「ッ……!」 気が付けば、時間を巻戻された側のルゴールド達が未来を見透かし、巻き戻した側の龍希が行動を読まれて狼狽えている。まさしく『魔法』のように不思議な状況を、楠木はたった一つのアイデアで作り出して見せた。しかしそれは本来、龍希であればノーヒントで容易に理解することのできる単純な仕組み。 寧ろ、龍希だからこそ絶対に気が付かなければならないものである。

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