そして世界に橋は架かる

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「奴は、いつか私にも手を出してくるのではないかと恐れている」 普通それを聞いた者は、「何をバカげたことを」と一蹴してもおかしくない。しかし先程の体験談を聞いたルゴールドには大袈裟なことを言っているようには感じなかった。 「確かに、こうよく見てみると羽桜龍希に好まれそうな身体をしているような……」 言うまでもなく、ガルドはブランクの父親でエルゼの息子である。マキナ家に惚れ込んだ龍希なら惹かれるような要素がその身体に散りばめられている。 「止めろ、悍ましい……!」 ガルドはプラタに強引に詰め寄られた時のトラウマが完全に呼び起こされており、身を震わせて怯えた。マキナ家と因縁を持ってから、いつかガルドを震え上がらせて見せると言うのが戦いに生きるルゴールドの決して小さくない目標であった。 (まさか、こんなところでそれが叶ってしまうとは……) 口から思わず乾いた笑いが零れてしまい、すかさずガルドに睨まれる。 「失礼。しかし、最後に貴方とこんなやり取りをするとは夢にも考えませんでした。良い思い出ができましたよ」 「……下らん」 ガルドはうんざりした表情で吐き捨てたが、その何とも形容し難い表情はルゴールドを再び笑いへと誘った。 「それはどう言う顔なんですか」 「黙れ」 まるで下戸の男が祝いの席で周りに合わせ、恐る恐る酒を口にしてみたがやはりダメだった、と言うようなものであった。 周りに満ちる幸福、爽快、この上ないポジティブな空気。試しにその雰囲気に心を任せてみたが、やはりガルドの感性は敵対者の間に芽生えた奇妙な友情などと言う、尊い感情を受け入れることはできなかった。 「馴れ馴れしい口を利くな。気分が悪くなる……つまり、これは世間一般で素晴らしいものと言うことなのだろうな。私には理解できないが」 「貴方も中々の苦労人なんですねえ」
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