序章

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 優しい黄色が彩るのは荒廃した灰色のアスファルトだった。  ヒビ割れ、埃まみれで緑に侵されている。  道路はもはや道路ではなく、砂利道とほとんど変わらなかった。だいぶ放置されていたのだろう。  道路の脇には標識が立っていた。こちらもサビだらけ。 『尾張瀬戸駅まであと25km』  綺麗な四角だったはずの看板は縁がサビて恐竜の頭みたいになっていた。 バリバリバリバリバリバリ  そんな看板の下をバイクが走り抜ける。マニアからすれば心おどる排気音だ。  そのバイクはハーレーと呼ばれていたものだった。アメリカ合衆国で生産された大型二輪自動車である。  いや、合衆国と呼ぶのは間違いだろう。  彼の大国も、今や小さな都市国家群と成り果てていた。  この日本と同じく。
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