第1章

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カランカラン 軽快にドアのベルが鳴って、青年は飛び起きた それは姉に仕込まれたおかげでできるようになったことで、一瞬間のうちにいつものバーテンダーとかかくや、というような姿に戻っている すぐさま「いらっしゃいませ」と営業スマイルとともに快活な声を発する これは青年自身で身につけたことであったが 入り口から20代と見える好青年が入ってくる 髪型は落ち着いた感じの七三で、眼鏡のふちは黒 透き通った白肌もあいまって中性的のようにも見え、ホストの仕事なんてした日の稼ぎは計り知れないほどだろう その姿を確認した青年は笑みを営業のものから普段の朗らかなものへと変え、「久しぶりだな、ユウト」と言葉をかけた その返事としてユウトと呼ばれた彼は「うん、久しぶり」と短く、青年に目も合わせずに答えて一番奥の席に腰をかけた 一見するとそれは無礼のように感じられるかもしれないが、二人にとってはいつものことであったし、出会った時から今まで変わったことはなかった
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