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 瞬く間に高校時代は過ぎ去り、 大学生になっても、 社会人になっても、 そして光子の姓が田村から山口に変わっても、 二人は夏になると海に出かけた。  高校生の時のような新鮮さは なくなったとはいえ、 光子は相変わらず美しかった。  ボーイッシュな髪型の先から 雫が肩に伝うのを見るたび、 哲の全身に微弱電流が流れ、 たとえ開放的な夏の砂浜にいるときでさえ、 視線を釘付けにされた。  しかし、 その自慢のラインが 崩れるときがやってきた。  三年前の新緑のころ、 光子の中に新しい生命が宿ったのである。  その知らせを聞いたとき、 一番喜んだのは親たちだった。
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