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 夏用の新作水着を 買ったばかりの光子は、 それが着られるようになるころには、 流行よりも体型が許してくれないだろうと、 箪笥の肥やしになるであろう水着を見ては、 小さな溜め息をついた。  哲も日に日に大きくなる 光子のお腹を見ては、 その後にくる親としての人生を思うと同時に、 産後の轍 ―妊娠線の痕や、お腹のたるみを、 哲はこう呼んでいた― がどこまで元に戻れるものかと、 気が気ではなかった。  しかし、そんな心配は まったく無用であった。  この夏、 山口家は三年ぶりに海に行ったが、 子供を産んでいるとは思えないほど、 光子は輝いていた。
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