第4話 皐月に香るは恋のストーム(2)

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下呂の駅まで送ってくれた母と別れて、私は久々名古屋に向かったが、ちょっとばかし気は重かった。  母には、仕事をしている素振りを見せたものの、帰っても仕事なんて何もない。八事の顔合わせがおじゃんになってからと言うもの、一切派遣会社から連絡が来なくなっていた。 求人が少なくなる時期ということもあるのだろうが、帰ったところで何もやることがない生活だけが待っていると思うと、それはただただ憂鬱だった。 一つ予定が入っているとしたら、未華子が企画した「フリーペーパー創刊パーティー」と言う名の外国人コンパだけ。 あの後、元気を取り戻した未華子は、積極的にミカと連絡を取っているようだった。 自分が一人下呂で働いている最中、二人がどんなやり取りをしているのか気にならないわけでもなかったが、正直、聞くのは嫌だった。 一時期ミカにときめいてしまったのは事実だけど、それはもう過去のことであって、現在進行中でどんどん前に進んでいそうな二人の間に割って入るようなことは、もうできないなと思っていた。
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