第6話 地獄の隙間のサンタクロース

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「えっ?!こんなにもあるの??」 沙織の口から、部屋中いっぱいの大きな声が飛び出したのは、あれから二週間が経過した日のこと。 信一が退院して五日後の日曜の昼ことだった。 信一は「大事な話がある」と沙織とミカを呼び寄せると、三神の里の財務書類を広げた。 沙織が思わず「こんなにも」と声を出したのは、この表を見た時だった。 「見ての通り、うちの宿は赤字続きだ。ミカの気持ちは嬉しかったんだがな……こんな状況が続いている中で、宿を引き継ぐというのはどうかと、病室で天井見上げてたら思うようになったんだ……」  父が言う通り、三神の里の財務状況は、素人目から見ても「ヤバイ」ことが一目瞭然の数字が並んでいた。 「こんなにもあった」のは、借金の額。 儲かってないことは分かっていたけれど、こんなにも危険な状況が続いていたことは、娘の私にすら知らされていなかったことだ。
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