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「道明寺、課長なんだって?」
「あなたには関係ない。黙って仕事しなさい、蕨 守道(わらび もりみち)」
「ツンデレっぷりは相変わらずだねー」
からかう様な口調にむっとして視線をきつくすれば、お手上げだとばかりに両手をひらひらと動かしてパソコンに向き直る。
この男、実力はかなり高いし仕事も出来るのに、どうしてか肝心なところの要領が悪いせいで出世とは縁遠い。
本人も上に行こうという気はさらさらないと言わんばかりに、自分の納得のいく仕事しかしようとしない。
それでもこの男の実力はここにいる全員が知っているせいか、かなり厳しい案件に対しては彼を外すことは考えられない。
「そう言えばこの前新塾の犯対(はんたい)が来た事件、落ち着いたみたいだね」
「聞いていない」
「被疑者死亡とか結構多いよね。まぁ犯罪者に対して発砲が許されているし、現場で片づけた方が早いし禍根(かこん)を残しにくいのかね」
犯体、犯罪対策課と呼ばれる凶悪事件を扱う課とは前の事件で少し協力することになったが、結局被疑者は死亡という形であっけなく幕切れした事件だったように記憶している。
あれだけセンセーショナルに取り上げておいて、犯人が死亡したということ以外あまり公にならなかった事件は決して珍しいことではないが、時折あるこのような事件の不可解な終わり方にどうして世間はもっと関心を持たないのか。その事の方が問題な気がする。
「私には関係ない」
「相変わらずー。そうやって大護にもツンツンしか出来なくて、まともに話せなかったんだろ」
「!そ、それこそあなたには関係ない!!」
「そこぉ!静かに仕事出来ないのかぁ?」
(そんなにあからさまだったの!?もしかして相手にもバレてた!?)
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