1日目

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見ると隣の男、蕨 守道(わらび もりみち)が笑っている。こんなヤツと同期だと思うだけでも腹立たしいのに、さらに同じ課で同じ勤務サイクルなんてどんな皮肉だろうか。 (御槃 大護(みたらい だいご)……) 彼は犯対に所属していたのに、この前の時期外れの異動で本丸にあるあの“特務”に転属になったというのは、同期でなくてもちょっとした話題になったから知っている。 決して、気になってという訳ではない。彼は有名だし、時期外れの異動先にしては異常だったし、仕方ない。これは不可抗力だ。 特務の仕事内容は多岐に渡るが、ほとんどは理解されていない。確か家族にも友人にも業務内容を話してはいけないという規約が含まれている。 そこに所属するのはだいたいが飛び抜けた能力を持つ生え抜きで、私達の期生で言えばトップ通過した私位しかお呼びがかかるはずのない警護官の中でも特殊な場所だ。 それなのに運動神経位しかまともに発達していないあの男がどうしてお呼びがかかったのか。 (…確かに剣道も柔道も強いし…体術系は省庁でも歴代トップクラスの成績だった。…これからの伸びシロだって十分あるし、SP(護衛)って線も……) そこでにやにやとする視線を感じて慌てて心の中である言葉を繰り返す。『あの男は存在自体が非常にむかつく』んだ、と。 本当はそんなことしか本人に言えない自分が非常にむかつくわけだけど。
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