デイティング

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コンベンションホールは森林公園の一角に在った。 太陽は中天にある。建物の反射光が眩しい。顔に汗が湧いた。 遥人はサマースーツの上衣を脱いで手に持った。 ◇いよいよね。頑張ってね ナオミが胸ポケットで囁いた。 「うん…………だいじょうぶかなあ。うまくいくかな?」 色とりどりの夏の草花が通路を華やかに彩っている。 ◇だいじょぶよ。スーパーコンピュータが選び出した相手だもの。間違いないわ ナオミはモバイルフォンの中に居るナビゲーターだ。 「それは、そうだろうけど…………」 ◇大切なのは飾らないこと。あなたは普段の通り振る舞えばいいの。ありのままでいいのよ 「正直に感じたままを言ってもいいの?」 ◇ええ。そうよ。 「で……でもさ。相手の服装のセンスを誉めるとか、何か気の利いたジョークで笑わせるとかした方がポイント高いんじゃ」 ◇ダメダメ! そんな事したら逆効果よ。わざとらしいのは絶対ダメ! あなたは、そんな事を考えなくていいの。何もしないでも、充分楽しい人だから 「そうかなあ」 遥人はナオミと話しながら花の通路を進む。
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