姫取物語 第1章

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 今は昔となりましたが、竹取の翁というものがいました。  そんな事はさておき。  ここはカトバンブ王国の首都、キュート。 荘厳な白鳥宮殿で有名な、世界の文化の中心地である。  この国の伯爵タケトリスには、ひとりの令嬢がいた。 名をニトレア。 すらりと背が高く、サラサラのプラチナブロンドで、色白でなんとも美しく、しかも仕草が可愛らしい、知的で、宮廷ダンスも抜群に上手という、素晴らしいお嬢様であった。  ただしその正体は、ドSで超面食いでウルトラ自己中のクソ女だった。 「お嬢様、今日はピーチア公爵のご子息であられる、モモータス様が、お食事のお誘いです」  執事のトシオリーが、来客を告げにやってきた。 ニトレアは弦楽四重奏の生演奏と紅茶とスイーツを楽しんでいた。 「あら嬉しい。  モモータス様はどんなお方?」 「先のデモン島遠征では、総帥として軍を率い、見事制圧に成功なさいました」 「少女マンガに出てくる主役の男の子みたいなイケメンで、ドンってしそうな?」 「いえ、どちらかというと少年マンガの方で、ドカバキというところしょうか」 「今日は体調が優れないから、また誘ってと。  それから、さりげなく耳に入れて欲しいのが、ルビ砂漠の砂漠ウサギを一度見てみたいと」  数日後モモータスは、ルビ砂漠へ旅立った。 そして旅から帰ってくることはなかった。
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