姫取物語 第1章

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「モモータス?  誰だっけ?」  執事のトシオリーが持ってきた知らせに、ニトレアはきょとんとした顔だ。 「先日ニトレア様と食事をしたいとお越しになった、ピーチア公爵のご子息ですよ」 「へー」 「憶えてらっしゃいませんか」 「うん、憶えてない。  じぃ、ごめんね、テヘッ」  ちなみにルビ砂漠には、砂漠ウサギなんて、いねえ。 いやしねえ。 いるのはせいぜいラクダと毒蛇だ。  そんなニトレアが、ある春のうららかに晴れた昼下がり、自宅の屋敷からカワイイ系の白い馬車に乗って出掛けた。 執事のトシオリーも同行している。  この日はキュートの町外れで馬術大会が行われる。 ニトレアはそれを見物に行くのだ。 馬術が得意な貴族や王族、騎士たちが、自慢の腕前を披露したり、ポロをやったりする。  なお、ニトレアは馬術には砂粒ほどの興味もない。 「あの大会に出てくる選手たちって、けっこうイケメンが多いのよ。  そうじゃなければ馬がぴょんぴょん跳ねて棒を飛び越えるのを、なんでわざわざ見なきゃいけないのか、わからないわ。  意味不明よ、イミフイミフ」
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