カオハギの誕生

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バスを待つこと10分。 時間通りに到着したバスに乗り込むと、一斉に乗客の視線が向けられる。 顔が引き攣りそうになるものの、動揺しては怪しまれると思った僕は一呼吸置いてから座席に腰を下ろした。 走り出して数分で亀岡駅に到着する。 僕と西山の捜索はまだあの海で行われているのだろうか。 それとも、もう逃げたとみなされて捜査網は広がっているのか。 スマホの電源が落ちている状態では、調べる事も出来ない。 そんな事を考えながら切符を購入し、京都駅行の電車に乗り込んだ。 霧島市から出て丸一日ではあるが、1週間以上逃げていたような気がする。 早く智樹に会いたい。 京都駅に到着し、早足で新幹線の切符販売ブースへ向かう。 その時、駅構内の大型モニターでニュースの映像が流れ始めた。 【昨日起こった城ノ内早苗さん72歳、城ノ内正也さん26歳の行方不明の報道と山火事についての最新情報です。山火事が起こった場所から2km程の車道で、不審者2名を乗せたとの事で、配送業を営む48歳男性より警察に通報がありました。サービスエリアで停車中とのことで警察が駆けつけましたが、不審者2名はトラックを奪い逃走。京都府警は12km先のサービスエリアに入っていったトラックを追い詰めたものの、不審者2名は海に身投げしたとのことです。遺体が見つかっていない事から生存していると判断し、捜索は現在も続いております。1名は10代から20代くらいの男性。もう1名は40代から50代の男性とのことです。身柄を確保でき次第、取り調べをするとのことです……】 その言葉の後で、トラックの運転手の証言を元に描いた似顔絵2枚がモニターに映し出される。
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