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「大貴、笑ってみろ」
その言葉に、僕は目を細めて口角を上げる。
「大貴、怒ってみろ」
その言葉に、僕は眉間に皺を寄せて口をへの字にする。
「大貴、悲しんでみろ」
その言葉に、僕は目に涙を浮かべて唇を震わせる。
「ハッハッハッハ、大貴……この半年で演技力も上がったんじゃないか?約束通り、来年の春から霧島学園に入学させてやる。この時期までお前を此処に閉じ込めたのは、あの京都でのニュースを世間が忘れるのを待っていたからだ……。だから、悪く思うなよ?その顔なら、女も選びたい放題だ」
それだけ言って僕を施術室に残して出ていくお父さん。
僕はベッドの上に置かれた鏡を手に取り、自分の顔を見つめる。
確かにお父さんが言っていたように、前の顔よりも男前だ。
自分でも見惚れてしまう程に。
僕は鏡を元の位置に戻し、施術室から出ていく。
2ヵ月でここから出られるはずだったが、なんだかんだ理由をつけて監禁し続けたお父さん。
まさか、こんなに長い間施術室で過ごす事になるとは思わなかった。
お父さんの話によると半年ほど経過しているとのことだ。
エレベーターに乗った時に感じた肌寒さが時間の経過を感じさせてくれる。
今日が何月何日何曜日かは解らない。
今はただ、智樹に会いたい。
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