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数分後、僕は西野家の前に辿り着いた。
シャッターは全て閉められ、智樹が居るであろう部屋の電気は消えている。
まるでゴーストハウスのように人の気配が感じられない。
ポストからは無理やり押し込まれた新聞が飛び出していた。
玄関の扉には【取材お断り】と赤マジックで書かれた白い紙が貼り付けられている。
「嘘だ……嘘だ……嘘だ…………」
僕は後ずさりしながらそう呟き、智樹の秘密基地へ向かった。
足を一歩踏み込む毎に、智樹の言葉が脳裏を過る。
『大貴、生きていてくれて嬉しいよ……』
『一緒に住もうよ……大貴』
『また……会えるよね?』
『大袈裟かもしれないけど、この世で一番必要。だって、僕達家族だもん!』
『ねぇ大貴……同じ高校に行けないかな?僕達……』
『高校に行っても、土曜日にはこの場所で2人で会おうね』
闇の中で微笑む智樹が僕に背を向ける。
『待ってくれ……』
心の中で叫ぶが、智樹は闇を突き進んでいく。
ーーーー無意識に流れてくる涙を袖で拭きながら走り続けた僕は、いつの間にか秘密基地に辿り着いていた。
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