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今の今まで首に刀身が当たってたのに、少年が立っている所まで3mはある距離ににこやかな笑顔で(実際は会話をしていた彼には見えてはいないのだが)立っていたのだ。
と、この距離でやっと気が付いたのか、白髪赤眼の彼等が死体に刺すのを止め、少年に襲い掛かってきた。
《…オ前ノ血ヲ寄越セェ!!!》
『俺の血なんて、美味くもなんともないと思うけど…』
左右正面から刀を振り上げ襲い掛かってきた。
その様子をただ呆然と後ろから見ていた彼は、
(あぁ、死んだな)
と、残念そうに心の中で呟いた。
だが、その考えもすぐに打ち砕かれる事となる。
少年は鞘と刀で、三方向からの攻撃を防いだのだ。
『へぇ?普通の人より力が強いしスピードも速い。
本当に人なのかな?』
何て分析しながらも、攻撃から防ぐ手は休めない。
キンッ!キンッ!…
カチカチカチ……
鍔競り合いになったかと思ったら、突然3人が少年から距離を取った。
『ほう。結構鈍いと思ったら、ホンの少し殺気を出したのに気付くんだね』
(“ホンの少しの殺気”?これが?
此処まで伝わってくるモノが?
どんだけなのさ、君の本気は…)
少年の発言を聞いた途端、彼と戦ってみたいと思ったのだった。
確実に今の自分と彼とで殺り合ったら、絶対と言って良いほど少年の方が圧倒的に強い。
少年から放たれている殺気や身のこなしを見て、何処まで自分が彼に通用するのか気になった。
少年の後ろにいる彼がそんなこと思っているなんて露知らず戦い続けている少年は、1度彼等から距離を取り一気に駆け出した。
そのまま斬り合いになるのかと思いきや、少年は彼等の頭上を自分の頭を下に向けながら、跳んだ。
彼等から数m離れた場所に降り立ち、
『…チェックメイト。さようなら』
と、呟き刀身を鞘にゆっくりと仕舞っていく。
彼等は背を向けた無防備な少年に刀を振り上げ、駆け出してきた。
そして、少年の背中を斬ろうとした瞬間、
…チンッ!
ドサドサドサッ!!
刀身が全て鞘に仕舞われた音と共に彼等は血を流すこと無く倒れた。
「!?何もしていないのに…どうして」
まだ其処にいた彼は、目を見開き驚きの声をあげる。
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