“ひじり”になる (出逢い)

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とお子を抱えた聖(さとる)に対し、とお子のランドセルが動きを阻む。 「俺の首に、腕を搦めて」 安定して運びたいという意志表示。 そろりと、とお子が聖(さとる)の首に腕をまわす。 聖(さとる)の首にまわったとお子の腕は、小学生相応に細い。 頼りなくて、儚い腕。 とお子は、自分の幼さを痛感した。 首に搦めた腕を見れば、自分は力のない子供なのだと自覚するしかない。 だが、その細い幼さが伝わったのか。 とお子の身体をしっかりと、聖(さとる)が抱えてくれた。 言葉にならない空気が流れる。 抱えられ、伝えられる温もりに、とお子は懐かしさを覚えた。 無心で縋れる温もりに触れたのは、久しぶりだった。
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