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とお子の頭は、悪い方ではない。
だが最初に思い込んだ『ひじり』という読み方が、合っていると思った。
「君は……朱(あか)いな」
言われて、とお子は自分を見回す。
とお子の背中に、押し潰された赤いランドセル。赤チェックのスカートから覗く膝下の怪我。
それに、とお子の目元は多分、赤くなりかけていた。
青くて蒼い人、聖(さとる)は今度こそ、とお子を助け起こすと。
とお子を自分の両腕に抱え上げた。
(――え?)
「そこに、俺の車がある。手当てをしてから話を聞こう。不安なら止めておくが、どうする?」
再び上から覗き込まれ、抱えられたとお子の身体全体が温かくなる。
とお子を覗き込む瞳は、“心配している”、そんな色を湛えていた。
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