粗相

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酪は、便失禁を犯したが、不可抗力である。 間に合わなかったのである。 酪の鳴き声は、カタカナ表記すると、ワンワンではなく、キャンキャンで、かん高い。今日初めて、くぅ~~んと鳴いた。うなだれて、絶望の色でないた。 トイレに前足はかかっていたのである。後ろ足が思うようにならないから間に合わなかったのであるが、今日初めてである。 鳴き声が違うのは、感情が違うからだが、とにかく後処理をしなければならないから、酪を抱き上げたら、怖がるから、お仕置きを恐れるのかと、勝手に察した。 お仕置きは、前の飼い主が与えていたのかも知れない。 これは不可抗力であるから、罰することは出来ないが、犬は言葉が通じないから、新しい飼い主は、垂れ流しお構いなしと解釈されても困る。その厚かましい解釈に達したら、トイレに行こうとさえしないだろうから、そうなったら、また考えよう。 まあ、トイレに行こうとしている間は、お構いなしとしよう。 トイレは、車椅子を用いても外さなければならない。 で、ことが済んだ後、後始末をして、車椅子に繋いで、餌を盛った。怒っていないことを示すためと、食事と車椅子を関連づけるためである。 酪は、まず食って、それから、車椅子をずらした。皿から遠く離れて戻った。車椅子の機能を覚えたようである。車椅子のままでトイレに進入しようとしたが、それは出来ない。 酪自身、なんとかトイレ問題を解決したいようである。皿とトイレを隣合わせにしたのも、その現れである。 いっそ、庭に出して、垂れ流し自由にすることも考えたが、なにしろ脱毛犬である。最低気温は3℃ぐらいまで下がっている。無理だろう。エアコン稼働は、23℃は、暑がりには灼熱地獄なので、寒がりと交渉に及び、20℃まで下げさせた。それでも暑い。この交渉は、人間の都合のみで、酪は埒外になっている。私の都合だけを言うなら、まだ暖房は要らないのである。嫁が酪をダシにして、暖房を入れさせたのである。 銀(シベリアンハスキー)なんか、氷点下の牛舎で冬を過ごして平気だった。和歌山で氷点下を記録するのは、ひと冬にせいぜい5日だが。 にしても、室内で、室温が10℃あれば、犬は大丈夫な筈である。少なくとも、毛が戻れば大丈夫な筈である。しかし、毛が戻る頃には、もう春かも知れない。
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