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昼間のユウレイ
今日は薄曇り。
家のすぐそばの土手下。
植木や背の高い草に遮られて、狭い河原はそうそう見るものは居ない。
たとえば、小人を連れた子供が遊んでいても。
時々人形のように持ち上げられ、抱きかかえられている小人は、かたちだけ見れば大人。シャツにジーンズという素っ気ない服でなければ、女の子がぬいぐるみを連れているのに似ていた。
ただ子供は小さな男の子で、小人を抱えたままススキを振り回したり、ぐるぐる回ったりしている。
おかげで振り乱された長い黒髪の間からは、ぐったりした顔がみえる。
「ねぇ刃」
はたと思い出したように、子供が立ち止まった。宙だ。
「おなかすいた」
「あー。じゃあ帰るか」
小人はするりと子供の腕から抜け出すと、先ほどの様子はどこへやら、身軽に河原石の上を伝って走りだす。肩越しに宙へ振り返り、ニィと笑った。刃。
「家まで競争な」
楽しそうに言うと、一気に速度を上げた。
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