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「--じゃあ、仕事関係の人間だってこと?」  説明が終わったあと、真田さんが言った。 「たぶん……そうだと思います」  手帳に名刺も入っていたから、それを見れば番号もメールアドレスもわかるけど、 手帳自体仕事用のカバンに入れっぱなしで、仕事以外では使わないから、その可能性が高いと思う。 「じゃあ、同じ会社かな」 「かもしれないです」 「それか、取引先とかか……」  真田さんが顎に手を添えて、考え込むような仕草をし始めたから、沈黙が訪れる。  その沈黙が、まだ耳に残っているあの声を蘇らせる。  なんとなく聞き覚えがあるような声。  それに、“あの日”って……。  少し落ち着いたせいか、そんな考えが巡ってきた時、真田さんの「あ」という声がそれを掻き消した。
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