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 二人とも考え込んでいたせいで訪れていた沈黙を、真田さんの「とりあえず」の声が破った。 「こうやってても仕方ないし帰ろうか。準備してきて。送ってくから。 今日車じゃないから、電車で申し訳ないけど」 「え……」 「今の水野さんを、一人でなんて帰らせられないから」 「いや、でも」 「まぁ、今日一緒に帰ったところで解決にはならないけど、でも、一人で帰るのはキツいだろ?」  真田さんは優しい顔で言ってくれていて、その申し出は、すごく有り難かった。  今日も尾けられるかもしれない。  もしかしたら、待ち伏せされてるかもしれない。  電話を切ったあと、そうずっと考えてしまっていたから。  怖くて、怖くて仕方なかったから。  だけど、いくらこう言ってくれていても、真田さんにそこまで甘えていいのか、躊躇してしまう。
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