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 乗り込んだ電車は、帰宅ラッシュで息をするのも気を遣うほど混んでいて、まともに会話が出来なかった。  改札を抜けて、人がほとんど通らない道に入った時、真田さんはポツポツしていた世間話を止めた。 「警察に相談しようか」  少しの沈黙のあと言ったその言葉に、真田さんを見る。   「まだ実害はないから、動いてくれないかもしれない。 だけど、今だったらあの事件で警察も敏感になってるだろうし、多少はなにかしてくれるんじゃないかな」  警察……。  その提案に、言葉を返せない。  答えない私に、真田さんが横目で視線を送ってくる。  誰かもわからない人から敵意を向けられている状況に、ニュースも影響してか、最悪な先も想像してしまう。  だから、怖い。  怖い……けど、だけど、やっぱり大袈裟なんじゃ、っていう気持ちの方が先に来る。
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