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 蘇るのは、初めて会った夜に、震えが止まらない身体を、一晩中抱き締めてくれたこと。  割れそうに痛む頭を、大丈夫、と何度も優しく撫でてくれたこと。 「もう大丈夫だから。……君をひとりにしないから」  真田さんは優しい顔で、私を見つめている。  その顔に、視界が揺れる。心が揺れる。  怖い。ひとりにしないで。  一緒にいて。 「水野さん」  今にも泣き出しそうな私に、優しく掛けられた声。  その優しさに、しがみつきたい衝動に駆られた。  だけど--。
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