174人が本棚に入れています
本棚に追加
「……理沙、出来るよね?」
当然のように呼ばれた名前は、私をいとも簡単に底のない恐怖へ落とす。
遅れて身体が震え出して、頭は考えるのを拒否しようとする。
耳を塞ぎたい。
この男から離れたい。
真田さんの元へ行きたい。
衝動が私を突き動かす。
今声を出したら、殺されるかもしれない。
真田さんの元へ駆け出したら、真田さんが危害を加えられるかもしれない。
もし今日逃げられたとしても、明日、明後日、明明後日、また来るかもしれない。
その考えが、私を踏みとどませる。
真田さんが電話が終わったのか、携帯をポケットに仕舞った。
私を見ると、軽く微笑んで私がいる方へ足を向ける。
最初のコメントを投稿しよう!