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「……理沙、出来るよね?」  当然のように呼ばれた名前は、私をいとも簡単に底のない恐怖へ落とす。  遅れて身体が震え出して、頭は考えるのを拒否しようとする。  耳を塞ぎたい。  この男から離れたい。  真田さんの元へ行きたい。  衝動が私を突き動かす。  今声を出したら、殺されるかもしれない。  真田さんの元へ駆け出したら、真田さんが危害を加えられるかもしれない。  もし今日逃げられたとしても、明日、明後日、明明後日、また来るかもしれない。  その考えが、私を踏みとどませる。  真田さんが電話が終わったのか、携帯をポケットに仕舞った。  私を見ると、軽く微笑んで私がいる方へ足を向ける。
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