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「水野さん、ごめんね。お待たせ」
「あっ、あのっ、真田さん……!」
被せるように大きな声を出したからか、真田さんが足を止めた。
真田さんとの距離は5メートルもない。
これ以上近付かれたら、気付かれてしまう。
「今の仕事の電話ですよね……?」
「あ、うん。そうだけど」
「こんな時間にかかってくるなんて、緊急なんじゃないですか?」
声が震えていて、一度強く唇を噛み締めた。
「いや、大丈夫だよ。また後でかけ直すから」
「い、家……もうここからすぐなんです。すぐ近くなんです。
もうここまでで大丈夫です。だから、戻ってください」
真田さんは眉をひそめて、私に訝しげな表情を向ける。
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