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「水野さん、急にどうしたの?」 「だから、本当に大丈夫なんです。 まだ時間も全然早いし、ここ結構人通るんです」  真田さんが一歩近付いたから、脅すように、男は刃物を強く押し当てる。  焦りで鼓動が早くなる。  喉に声が張り付く。  お願い。  お願いだから、これ以上近付かないで。 「いや、だから、そういう訳には……」 「だから、大丈夫ですって! 送って下さって、本当にありがとうございました。真田さんも、気をつけて帰ってくださいね」  巻き込めない。巻き込みたくない。 「本当に大丈夫です。 大丈夫、だから……。お願い……」  まるで祈るように言った私に、真田さんは、訳が分からない、そんな顔で頭を掻く。  苛立ったような大きなため息をついた後、口を開いた 。
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