31/34
前へ
/34ページ
次へ
「……っ」  喉から声にならない音が漏れた。  その瞬間、 --好きだ。好きなんだ。    頭を強く殴られたような衝撃が襲った。  それと同時に、目の前の男の顔に、違う人物の顔が重なる。    なに……これ……?  おぼろげだった顔は、はっきりと輪郭を現していく。  その顔に、息をするのを忘れそうになる。 「おと……さん……?」  口の中で呟いた言葉は、声にはならなくて男には届かない。  行為は続いているのに、執拗に撫でられているはずの太ももは、なにも感じなくなっていく。  ただ頭に、答えなんて見つけられない疑問だけが浮かんでは消える。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

174人が本棚に入れています
本棚に追加