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「水野さんっ!」  突如聞こえてきた声に、男の指の動きが止まった。  大きな舌打ちの後、体を押さえつけていた重みが消える。 「おい! ちょっと待て!」 「離せよ……!」    足元の向こうで、言い争っているような声が聞こえる。  激しく響く砂利の音と、何かにぶつかったような重い音。  この声は……真田さん?  あぁ、戻ってきてくれたんだ。    微かな安堵を覚える。  目の前に広がる夜空には、半月が浮かんでいる。    さっきのあれは、なんだったんだろう。
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