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「水野さん!」
視界いっぱいに現れた真田さんの顔が、月を隠した。
焦ったような顔は、私の顔の横に添えられて、すぐ見えなくなった。
また、月が見えた。
「大丈夫。もう大丈夫だから」
私を抱き締めていた真田さんが、私の体を起こしてくれる。
ふわりと肩に上着をかけてくれる。
「一人にしてごめん……。本当に、ごめん」
真田さんの声が、遠くに聞こえる。
好きって、どうして。
どうして、お父さんが私に言うんだろう。
どうして、あんな顔で言うんだろう。
どうして。どうして。どうして。
「水野さん? 水野さんっ!」
その声を最後に、私の意識は途絶えた。
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