648人が本棚に入れています
本棚に追加
「客人を差し置いて、主ばかりが飲むわけにはいかないだろう?」
「それでは、お水をお願いします」
「じゃあ、ルームサービスで、炭酸水でも――」
「いえ、本当に、水道のお水で充分ですから」
「水道の水って、君……」
という問答の末、結局、
今、私の前には、ワイングラスに入った、無色透明の液体が置かれている。
器が豪華だと、こ洒落たドリンク風に見えるけど、
中に入っているのは、料理に付いていた、ただの飲料水だ。
『はあぁっ』、と、
思わず出そうになる溜息を、笑顔で封じ込める。
――どっと、疲れた。
なんだか、これだけで、すっかりエネルギーを使い果たした気がする。
これからが、本番なのに、
最後まで、笑顔キープできるだろうか、私。
かなり、怪しい。
最初のコメントを投稿しよう!