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「遠慮しないで、どうぞ飲んで? ただの水で申し訳ないが」
皮肉交じりの笑みに、すっかりひきつりまくりの笑顔もどきで応戦、
「はい、いただきます」と、
一口ごくりと、喉を湿らせる。
ただのお水が、一番。
安くて、安全、健康第一。
ワインなんか、うっかり飲んでボロが出たら、大変だ。
「それで、お話の方なんですが……」
「君は、いくつ?」
――は……あ!?
私の言葉は、脈絡のない質問で返され、完全にスルーされてしまった。
いきなり、初対面の女性に、年、聞きますか普通。
そっちが無視するなら、こっちだって無視!
したいのはやまやまだけど、それじゃ、会話が続かない。
「28ですが?」
「ほう……28か。良い年頃だ」
赤いワインを口に含み、ゆっくりと味わうように飲み下しながら注がれる視線がなんとなく粘着質で、背筋に『ぞぞぞ』と、悪寒が走る。
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