24 計略-2

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「これは、事故です」 「事故?」 「はい。酒の上での、出合頭の衝突事故です。特に恋愛感情がどうのという問題じゃありません」 「出合頭……ね」 彼は、喉の奥で、愉快そうにククッと笑って、質問を投げ付けてきた。 「別に、東悟でなくとも、誰でもよかったと?」 ――ううっ。 なんて意地の悪い聞き方をするんだろう。 「接待の二次会で、二人とも、お客様に、だいぶ飲まされてしまったので……、少し羽目を外しすぎました」 飯島さんごめんなさい。 この際、言いわけに使わせていただきます。 この時の二次会の席で二人きりになった時に、奇特にも、私に愛の告白なるものをしてくれた飯島さんに、心で詫びて、 「この件は軽率だったと、私も充分に反省しています。ご不快な思いをさせてしまって、申し訳ありませんでした」 頭を下げて、一秒、二秒、三秒。 先に折れたのは、彼の方だった。
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