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この人は、すべて知っている。
過去、谷田部課長と私が付き合っていたことも、
別れた原因も、その後の経緯も、
そして、現在の、二人の微妙な関係も。
たぶん、すべて調べつくした上で、私に意地悪な質問をぶつけて、その反応を見て楽しんでいる。
そんな気がした。
だったら、いちいち素直に驚いて、楽しませてやる義務はない。
どんな目的があるのか知りたかったけど、
やっぱり、私に探偵の真似ごとは無理だった。
この辺が、引き時だ。
そうと決まったら、即行動――とばかりに、
「すみませんが、もうそろそろ、会社に戻らないといけないので、失礼させていただきます」
とソファーから腰を浮かしかけた時、
「おや、都合が悪くなると、逃げるのか?」
揶揄するような声が飛んできた。
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