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「……」
思わず、答えに詰まった。
膝の上に乗せた両の手のひらを、ぎゅっと、握りしめる。
正直に答えるなら、私は、課長から、過去に何があったのかは、『聞かされていない』。
ただ、『あの時は、すまなかった』と、詫びの言葉を言われただけだ。
でも、それを口にするのは、ためらわれた。
自分が何も知らないこと、
それを知られることが、嫌だったからじゃない。
知らないと答えることで、
この人が、次に何を言うかが、予想できてしまったから、ためらったのだ。
「簡単な質問だと思うが、答えられないか? それとも、答えたくないのかな?」
ここでダンマリを決め込んでも、話は進まない。
結果、私は、ここから帰れない。
気は進まないが、答えるしかない。
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