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「……聞かされていませんが、そのことが何か、この後のお話しに関係ありますか?」
「おおいにあるから、聞いているのだが?」
こうもきっぱり肯定されては、さすがに、反論できない。
「……聞かされて、いません」
「なら、まずその辺から、説明しないといけないな」
「ま、待って下さい。それは……」
「聞きたくないと?」
――聞きたい。
知りたい。
今まで、知りたくても、課長には聞けなかった、過去の出来事。
あの時、置き去りにされた恋心が、今も胸の奥底で泣いている。
『どうして?』と、泣いている。
でも、それは、この人の口から語られるべきものじゃないはずだ。
だから、私は、決意を込めて、ゆっくりとうなずいた。
「はい。聞きたくありません」
――少なくとも、あなたからは。
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