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しばしの間、思案に暮れるように、
トン、トン、トン――と、
彼の長い指先が、テーブルの上を小さくはじく。
その音が止んで、数泊後。
「では、あいつのことではなく、私のことを話すとしようか。それなら、構わないだろう?」
私の返事にはノーリアクションで、彼はそう言って、ニッコリと、悪魔めいた笑みを浮かべた。
「……」
――そんなもの、聞きたくありません。
とは、さすがに口に出せずに黙っていたら、それを了承と取ったのか、彼は、ニコニコと語り出した。
「私の叔父、私の、死んだ父親の弟にあたる、谷田部総次郎は、親が残した財を元手に一企業から、一大コンツェルンを作った男でね。――君は、ヤタベ・グループを知っているかな?」
「……は?」
いきなり始まった『私の叔父さん話』に付いていけずに、ハトに豆鉄状態で、目を瞬かせる。
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