648人が本棚に入れています
本棚に追加
――えーーと。
「ヤタベグループなら、知っています、はい」
なるべく表情に気持ちが出ないように気を付けて、聞かれたことにだけ端的に答えれば、
「良かった。それは、話が早い」
含み笑いで皮肉が飛んでくる。
――くやしい。
なんだか、心の中をぜんぶ、見透かされている気分だ。
まるで、
その手のひらの中でゆらゆらと揺らされ、後は飲み下されるのを待っているだけの、ワイングラスの中味みたいに。
コクリ、と、
また一口、ワインを美味しそうに口に含み、彼は話しの続きを始めた。
「叔父、谷田部総次郎には、亡くなった兄に他に4人の妹と、1人の弟がいてね、その弟というのが妾腹だった」
――妾腹?
お妾さんの子供の、妾腹?
そういえば、以前、課長に、からかわれたことがあったっけ。
最初のコメントを投稿しよう!