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「さあ、どうぞ」
シンメトリーで、左右対称に作られた木製の、重厚なダークブラウンの扉のうちの、右側。
キーロックを外した彼は、満面の笑顔で私を招き入れる。
ハンドバックを胸にギュッと抱きしめ、
極力平静に見えるように、
その実はかなり恐る恐る、私は、部屋の中へ足を踏み入れた。
「……失礼します」
さりげなく、部屋の中の見える範囲に、さっと視線を走らせる。
部屋の中は、無人だった。
『盗撮写真を撮ったような、物騒な人たち』が、中で待ち伏せている可能性も、まったく無いとは言えなかったから、
とりあえず、無人だったことに、ホッと一安心。
心底、胸をなで下ろした。
万が一、
部屋の中に妙な連中がいたら、速攻でエレベーターまでダッシュするつもりだったけど、
取り越し苦労ですんで、ほんとうに良かった。
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