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勝負はクニが押し気味だった。体格で勝るクニが圧力をかけ、積極的に前に出ていく。小柄(こがら)な新藤(しんどう)はそのたびに同じ距離を置いて、身体(からだ)を引いた。勝負を終えたテルがいった。
「おいおい、新藤ってけっこうやるじゃないか」
タツオもうなずかざるを得なかった。
「ほんとだね。見事な足さばきだ」
流れるように斜め後方にさがり、クニが振りまわす拳(こぶし)を避けている。しかも距離は正確に一定だった。クニの手は届かないが、それ以上遠くに逃げようとはしなていない。
ジョージが叫んだ。
「クニ、気をつけて。新藤くんは一太刀(ひとたち)狙っているよ」
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