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冷え込みが厳しいこの冬にしては、珍しく寒気がおさまり、ポカポカ陽気とはいえないまでも、陽射しがある快晴の土曜日のこと。
週末になると天気が悪かったのだが、久しぶりの爽やかな週末であった。
中津川玲子と岩村さとしは、両国駅から首都高速沿い、蔵前橋の近く緑道公園にいた。
時刻は午前11時。
いい天気だが、川沿いはさすがに風が冷たい。
玲子は、黒のロングスカートにワンピース、黒のロングブーツに黒のカシミアコート、そして頭には黒のロシア帽を被っている。
まるで。。
「メーテルみたいって言いたいんでしょ。」
玲子は笑った。
「その通りよ。アタシ、最近銀河鉄道999にはまってるの。」
それでなくても、人目を魅く美貌の持ち主だ。
それがこの格好とくれば、すれ違う人は必ず振り返る。
目立つなどというものではない。
「目立ち・・過ぎはしませんか・・。」
岩村はおそるおそる言った。
この公園に子供と散歩にくる女???吉良義人の昔の恋人ーーー大石莉子をここで待ち受けようとしているのだが、この玲子のいでたちでは、すぐに相手にバレて警戒されてしまうのではあるまいか。
「それが何か悪い?」
「いや・・相手に警戒されないかと・・。」
「馬鹿ね。」
玲子は鼻で笑った。
「警戒されるもなにも、アタシは最初から、こっそり盗み見るなんて格好悪い真似する気はないわ。」
「・・どうされるつもりなのですか・・?」
「自然体よ。」
「自然体?」
「話しかけるタイミングがあれば話しかけるし、そうじゃなきゃ、普通に様子を見てるわ。」
玲子はそういって、ベンチに腰かけ、長い足を組む。
玲子は座ると、普通の公園が映画の1シーンのようになる。
「華」という言葉が玲子にはぴったりである。
「あなたも座ったら。」
玲子に促されて岩村もベンチに腰をかける。
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