第三章

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翌朝。 若い藩士達は起きてきた男に昨夜の出来事を話した。 「貴殿とわれわれの仲で水臭いではないか。好いた女子がおるくらい隠し立てすることではあるまい。」 彼らはめいめいに男をなじった。 男は複雑な表情で若い藩士達の言葉を聞いていたが、 「不審に思うのは致し方ないことだが、これにはわけがある。わが恥を語ることになるが、真実を語ろう。」 男は重い口を開き、実に奇妙な話を若い藩士達に聞かせた。 「拙者が江戸にいた頃、ある娘と親密になった。しかし、それは為さぬ仲であったので、拙者は娘を捨て江戸を出た。拙者が江戸を出たあと、娘は商家に嫁いだそうな。 それは良縁であったようで、子もふたり生まれたと聞いている。 しかし、恋の執心とは恐ろしいもので、貴殿らが見たように毎夜丑の刻になると、江戸から何里も超えて魂だけが拙者の元に参るのだ。 娘の拙者に対する恋心か、はたまた拙者の娘に対する恋心か・・ それはわからぬが・・。 いずれにしても武士にはあるまじき未練・・。 どうかこのことは貴殿らの胸にしまっておいてくれ。」 男はそう言って、寂しげに笑ったという。 その笑顔の儚さを若い藩士達は忘れることはできなかったという。 それから三ヶ月ほど経って、男はなんとなく病みついて死んでしまったそうな。
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