第三章

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「よく似た話じゃないですか。」 玲子が物語ったはなしに岩村は身を乗り出した。 「子供の人数まで合ってる。」 玲子は珈琲カップを両手で包み込むようにして持ちながら、口に運ぶ。 「歴史は繰り返すというけれど、昔の故事の中には現代で考えれば不思議なことの答えが既にあるの。私たち陰陽師はそういった人間の根本的な繰り返しの事実を精査してものごとの本質を見極めるのが仕事なのよ。」 岩村は玲子の言葉にわかったかわからないのか曖昧な表情で頷いた。 その様子を見て、玲子はくすりと笑った。 「このはなしの本質を理解すれば、今回の事件もすぐに解決できるわ。」 「本質?」 「大石莉子の双子の子供の名前を聞いたの。」 「名前?」 岩村は首をひねった。 玲子はゆっくりと噛み締めるように言った。 「双子の名前はどちらもヨシト。吉凶の吉に人間の人で吉人と、もうひとりは良し悪しの良に仁義の仁で良仁。つまりふたりの名前の上の文字を組み合わせると吉良。呼び名はふたりともヨシト。あわせると吉良義人になるわ。」 「それでは・・。」 「大石莉子の気持ちはまだ吉良義人にあるということね。」
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