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「もう元はとっただろ?そろそろ暇を出してやったら?」
「嫌だ!いくらユリちゃんが言っても、それだけはダメ。これは僕の宝物なんだから」
こんなにありがたがられちゃ、それ以上言えないじゃないか。
まったく……
ほどなくして、私達はいつも通っているジムに着いた。
楽しげにスポーツバッグをトランクから下ろす裕作を見て私は言った。
「ちょっと買い物に行ってくるよ。後から行くから、受付でバッグを預かってもらっておいて欲しいんだけど」
「なら僕も行くよ。ユリちゃんとデートだね」
「来なくていいよ!裕作は腹筋でも割ってな!」
70のジイさんに私も何を言ってんだか……
裕作は泣きそうな顔で何かを言いたそうだったけど、私は気にせずすぐ近くのショッピングセンターへと向かった。
こんな私はガラじゃないんだ。
自分でも自己嫌悪に陥りながら、チラリと振り返る。
裕作はまだ私の背中を見ていたらしく、嬉しそうに大きく手を振っている。
『早く行け』と払うように手を振ると、裕作はしょんぼり肩を落とし、バッグを二つ持ち中へと入って行った。
「悪いことをしてるみたいで、気分が悪いったらないよ」
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