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ショッピングセンター内にある目的の店へと向かいながら、こんな買い物はいつ以来だったかと思い返す。
私は、実の親が心配するほど何もできない、女の子らしさの乏しい少女だった。
毎日泥だらけになって遊び回り、お人形遊びやままごとなんてしたことがなかった。
私とは逆に裕作はよく女の子に囲まれてそんな遊びをしていたが、私は何も思わなかったし、冷やかす男子は片っ端から泣かせていたものだ。
私にとって、裕作は弟に近く“守るべき存在”だった。
だからいつも一緒にいたし、それが普通だった。
やがて年頃になると、裕作の見目が良いことが女子の間で話題となった。
その様子を見ながら、私は私なりに、裕作との関係がいつか終わるのだろうと、寂しくもあり恐れてもいた。
なのに裕作は『ユリちゃん、ユリちゃん』と暇さえあれば私を探し、私にくっついて行動する。
そして私も、それが迷惑だとか煩わしいとか思ったこともなく、その関係がベストで一番居心地のいいものだった。
恋だ愛だとは考えたこともなく、ただ裕作との時間が自然であり、気持ちのいい時間だった。
それでも、裕作に対しての人気は高く、私はよくやっかまれたものだ。
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