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「いや、違う!これは、その、植木屋ではなく植木屋が経営している花屋で働いているんだ」
「そ、そうですか……」
顔の前で大げさに手を振りながら弁明したその人に心の中で悪態をつく。
まあ、どっちもどっちだが地球に優しいということに変わりはないと思うの。ていうか堂々と魔王なんて名乗っている割に、その辺の設定がふわふわってどういうことだ。なりきるなら細部にまでこだわるべきだろ!と、喉まであがって来た完璧主義者のような言葉を飲み込み、とりあえずサングラスを外した。
このままでは不審者VS不審者の図にしか見えないだろうからね……。
「ああ、やっぱり誰よりも綺麗な瞳をしているな。さすが俺の花嫁だ」
「はいはい、分かりましたから。それより仕事に戻らなくてもいいんですか魔王サマ」
「多少なら構わないだろう。やっと愛する妻とこうして話す事ができたのだからな」
「妻って……まだ結婚してませんよね私たち」
どうやら悪い奴という訳ではではなさそうなので、警戒レベルを引き下げて適当な相槌をうつ。
「いずれはそうなるのだから、問題はない」
「問題しかないの間違いですけどね」
「何を驚いているんだ凛? ……そうか分かったぞ。俺が予想していた以上にいい男だったから感激に打ち震えているのだな」
「どちらかというと怒りで打ち震えそうなんですけど。だいたい、どうして私の名前を……」
知っているんですかと続くはずだった言葉は、私の背後から聞こえてきた腰にくる低音によって打ち消されてしまった。
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