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「あの、すみません政宗様。ご指名が入ったのですが……」
突然、何の前触れもなく黒いカーテンの向こうから現れた店のボーイがそう言って申し訳なさそうに私を見た。
「ちょっと、ノックくらいしなさいよ」
「の、信長様!申し訳ございませんでした」
灰皿に煙草を置き、入り口を睨み付けた信長に新人のボーイがたじろぐ。それもそのはず。私を含め、ここにいる三人はこの超高級ホストクラブのトップ3なのだ。
このクラブは完全な会員制で、持っている資産や家柄で会員になれるかどうかが決められる。
その中でも私たち三人に会うためには更に条件があり、多少の成金では私たちを見ることすらできない。
そんなクラブに需要があるのかと思われそうだが、売り上げは上々。
ここにいる戦国武将三人組みは、すでにひと財産築き上げていることだろう。お金が無い者は店に入ることすらできず、莫大な資産さえあれば美女にお酒にと豪遊三昧。そんな資本主義社会の縮図のようなこの場所で、私は今日も金持ちのくだらない愚痴に耳を傾ける。
決して周囲に誇れるような仕事ではないが、私はこの仕事を心底気に入っているのだ。
だってここには愛がないから。
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