第1章

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  「あー……疲れた」 時刻は良い子も眠る午前二時過ぎ。 仕事を終え重い体を引きずりながら待機所に戻って来ると、豪勢なその部屋は淡い白銀の煙で満たされていた。この安っぽいメンソールの香りは信長サマだな……。 煙草独特の苦い香りは甘い香水と交じって多少中和されているものの、やはり煙たい。 「ちょっと煙いよ信長さーん。吸うなら換気扇のとこで吸ってよ」 そう目の端に映る金髪のお姫様に声をかけて、履いていた有名ブランドのピンヒールと堅苦しい黒のドレスを脱ぎ捨てた。 先にあがっていたらしい信長と信玄も、私と同じように下着姿でだらしなく黒い革張りのソファーに寝そべり携帯を眺めている。 「ムリー私もう一歩も動きたくない。顔の筋肉も動かしたくない」 「信玄は、足がむくんでいますぞ殿!これが瞬時に解消される薬とかあったらお金に糸目はつけないのに」 「二人とも疲弊しきるのは勝手だけど、ささっと化粧落とさないと将来恐ろしいことになるわよ」 金をあしらった豪勢な化粧台に座り、素早く厚手の化粧を落としていく。準備に小一時間かかるこのセットも、落とすときはほんの数分しかからないのだから何とも切ない気持ちになってしまう。 「……ねえ、何の冗談?」 化粧を落とし黒のパーカーとスキニージーンズに着替え終えたとき、ソファーにいた信長サマがまるで世界の終りのような声をあげた。  
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