少女は木漏れ日の下で

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 私たちは互いを求め合い、貪り合った。  決して悔いることのないよう、どこまでも、余すところなく――ただ一度限りの契りを。  私はフィーネよりずっと早く死ぬ。  けど、愛し合う全ての者が同時に生まれ同時に死ぬわけじゃない。  それぞれがそれぞれの時間を、駆け抜けて、過ぎていく。  遙かなる時の流れの中で、限りある命と命が重なっただけで、奇跡なのだから。  性を司る夢魔が、新たな生命が宿ったことを告げた。    ◇ 「汚らわしい……!」 「少女と思って油断した!」  エルフたちが私を捕らえ、口ぐちに罵る。 「お願い、乱暴はやめて」 「しかし巫女!」  そのとき、 「しくじったか」  灰色のオウムが降り立った。  私はオウムを睨みつける。 「任務は違えてない、世界樹の巫女は死んだ」 「ほぉ?」 「彼女は巫女の資格を失った。  森の加護は得られない。  だからもう暗殺者を送り込む必要はない」  オウムはねっとりとした視線でフィーネをねめつけ、なるほど、とうなずいた。 「いいだろう。  では最後の仕事はわかっているな?」 「わかってる。  でもここで醜い姿を晒したくない。  あなたに頼める?」 「よかろう」  オウムの黒い眼に凶悪な光が宿った。  私はフィーネにほほ笑みかける。 「何があっても悲しみに囚われないで。  あなたはもう一人じゃないから」 「待っ……」  フィーネが私に駆け寄るより先に、オウムが呪文を紡いだ。 「【強呪】」  胸の内側で心臓が爆ぜる。  体がぐらりと傾ぐ。  自らの魔法で命を断ったオウムもまた地に落ちる。  エルフたちが驚きに目を見開く。  倒れ伏す前にフィーネを見た。  フィーネ。  そんな顔しないで。  私は本当に幸せだったから。  生まれてくる子どもの顔を見れないのが少しだけ残念だけど。  あなたと過ごした日々は、きらきらと輝くような時間だった。  ありがとう。  さようなら。    *   やがて森は衰え、エルフ族は徐々に数を減らしていく。  十数年後、世界樹の森から一人のハーフエルフが旅立ち、世界の運命を決定する少女と出会うことになるが――それはまた別のお話。    少女は木漏れ日の下で/Fin
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